皆さん、こんにちは。
桜が散り、薄紫のツツジが咲き始めました。
暖かい日が続いていますが、皆さんはいかがお過ごしですか。
さて今週の更新です。
前回は、萩谷が自宅に保管しているマカに、エスウイルス抗体の入った免疫製剤を投与したところで終わりました。萩谷はマカが無事に生まれてくることを願っていますが、その理由は経済的なものでした。二人の子どもを卵子バンクを通じて授かった萩谷には、その時の莫大な借金と卵子バンクへのローン返済が残っていたためです。ただ、マカを買い取ると申し出た萩谷の大学時代の後輩は、アグリテックジャパンの人間です。アグリテックとエスジーは先日業務提携を発表したばかりですが、廃棄したはずの超人『マカ』がアグリテックに渡っていたと知れたら大問題です。それは萩谷も重々承知しているのですが、それでもマカを売らなければやっていけないほど苦しい経済状況に、萩谷は何度も自分を正当化しながらここまで進んできました。
さて、そのマカを助ける免疫製剤は柴崎の血液から作られました。今回は、オキトコスを飲み始めてうつ症状が回復してきた柴崎とエスジーの取締役だった九鬼清志郎の接点について、エスジー側の視点から描いていきます。そこには柴崎のメンター的存在でもある早見凛太朗と九鬼の関係も含まれます。
約2カ月前、柴崎と九鬼の間に何が起きたのか。
また20年前、早見と九鬼の間に何があったのか。
柴崎が生まれる前の超人プロジェクト、具体的には2代目の超人『ハジメ』について少し情報を追加したので、ぜひ当時の状況を想像しながら読んでみてください。
それでは、連載小説『特異点5(仮)』、第11回『根っこ』。
どうぞお楽しみください。
Photo by atanaspaskalev