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  • 執筆者の写真うだりお

新刊『特異点2069~稠林の迷い子編~』が発売されました!

更新日:2023年12月23日


うだりお 長編小説 カバー 特異点シリーズ 稠林の迷い子編
時は2069年。国の人口が8000万人を切り、そのうちの半分以上が70歳以上の高齢者という時代。フジサキ法の成立により、企業が作り出した人間である『企業産』と、自然交配によって生まれた『自然交配型』の2種類の人間が入り混じる社会で、自らを『神の怒り(カミナリ)』と称する反社会的集団に属するサムは、高齢者を狩ることで報酬を得て生活していた。そんなある夜、サムは上物狩りの命を受ける。ターゲットはスマートジェネティクスジャパン取締役の藤崎幸大。藤崎はサムが幼少の頃にサムを檻の中に閉じ込めた因縁の相手だった。復讐心に駆られ、仲間と藤崎狩りに臨んだサムだったが、狩りの途中で、サムの中にいる化け物が意図せず外に出てきてしまう。サムは自分の中に獰猛な化け物を飼っていた――。

皆さん、こんにちは!


季節は秋に差し掛かり、空気が冷たく、また、日が落ちるのも早くなってきましたが、皆さんはいかがお過ごしですか?


今日は、新刊のお知らせです。


昨年4月からWeb上で連載してきた小説『特異点4』が『特異点2069~稠林の迷い子編~』として電子書籍にて発売されました。


特異点2069~稠林の迷い子編~


ただ今、11月10日まで300円のセール中ですので、ぜひこの機会に読んでみてください。




さて、ここからは、皆さんに興味を持ってもらうために、本作の内容を少しだけお伝えします。


本作は、今から50年後の未来が舞台です。

人口が8千万人を切り、国の借金は膨れ上がり、人々は同じ価値観を共有した幾つもの小さなグループに分断される、そういう社会が舞台です。


本作の主人公はサム。反社会的集団『神の怒り』のリーダーとされている人物です。


神の怒り、通称『カミナリ』は、個人同士の緩い繋がりで集まった集団であり、それぞれがカミナリという看板を背負って自由に行動する犯罪者集団です。仮想空間のハッキング、VRアカウントの売買、違法薬物の密売や遺伝子詐欺、警察組織の監視・盗撮など様々な犯罪行為を繰り返していますが、組織的犯行の立証は難しく、警察は未だにカミナリグループの根絶には至っていません。


カミナリを構成しているのは、主に企業の教育プログラムから落ちこぼれたGMCです。GMCというのは、Genetically manipulated childの略、つまり遺伝子操作された子どもという意味ですが、どれだけ緻密な遺伝子設計を施しても、期待通りの能力が発現しない子どもはたくさんいます。そういう子どもたちの中には、教育プログラムについていけなかったり、他者と比べて自分に失望したりして、やがてカミナリのように自分たちを受け入れてくれる場所へ落ち着いていく者もいます。


カミナリには、全国に『クアリ』と呼ばれる小さなグループが幾つも存在します。それぞれのクアリには、『ノード(喉)』と呼ばれるリーダーがいて、サムはその一人です。


サムは畸形児であり、特異体質者です。痛みを感じず、幼少の頃は左右で手足の長さが違っていました。大人になった今は、周囲と同じ体をしていますが、畸形の名残はその額に残っています。サムの額には三つ目の眼球があるのです。この額の目、普段は閉じていますが、それを開くと、中から『化け物』が出てきます。サムの中には凶暴な化け物が住んでいます。それは一度外に出てきたら、目の前にあるすべての物を破壊し尽くすまで消えてくれず、サムでさえ止めることができません。そういうこともあって、サムはカミナリの中で最も恐れられるノードの一人と考えられています。


ただ、サムは、化け物を外に出した後は必ず、深い虚無感に襲われることを知っています。「靴底で蟻を踏み潰したような感覚」とサムは言っていますが、それが何なのかは、サム自身も分かっていません。そしてその答えを知っているとサムが考えているもの、それが『白い光』です。


サムは幼少の頃、檻の中で生活していましたが、そこから抜け出すのを手伝ってくれたのがその『白い光』でした。「人の形をした光」とサムは言っていますが、サムしかそれを見たことはありません。しかしサムは、白い光の存在を信じて、今でもそれを探しています。なぜなら、白い光だけが、唯一、サムの中に住んでいる化け物を手懐けることができたからです。


さて、ここまで話して、サムの中に二人のサムがいることに気付いた方もいるでしょう。


カミナリの喉として気丈に振る舞うサムと、化け物に怯え殻に閉じ籠もるサム。


周囲が見ているサムは前者のサム。畏怖の対象です。一方で、殻に閉じこもって化け物に怯えるサムは、周囲からの疎外感を感じ、漠然とした虚しさを感じています。


本作は、サムという特異な若者の目を通して、医療や福祉、教育やモラル、そういったものが崩壊した社会を描いています。そこでは皆が『助け』を求めています。サムも同様です。しかしサムは、自分自身が助けを必要としていることに気付いていません。


物語の中盤、サムは生まれて初めて『痛み』を経験します。そしてそれまで知り得なかった自分の中の『怖い』という感情に気が付きます。


サムの中に住んでいる化け物とは何だったのか。

自分の殻を打ち砕き、化け物と対峙したサムの目に映った世界はどんなところだったのか。


特異点シリーズを通して描いてきた『妙な記憶』は、本作にも登場します。ただし今回は、サムが額の目を開けている時しか見えていなく、額の目を閉じると、サムも覚えていません。


興味がわいた方は、ぜひ試し読みをしてみてくださいね!


作品概要と試し読みはこちらからどうぞ。


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