
Photo by ChatGPT
マロン
大量の蝉が鳴いていた。
頭上の空には綿雲が浮かび、ゆっくりと遠くの竹林の上を移動していた。
土手を下りた先の小道に自転車を止めた少年は、周囲から押し寄せる蝉の声と、目の前で異様な雰囲気を醸し出すぼろぼろの家屋に圧倒されていた。
それは見たこともないほどに古い木造の平屋だった。縁側は雑草で覆われ、トタンの外壁には草の蔓が這い上がっている。縁側の屋根は割れて穴が開き、妻壁は赤く錆びついて縞模様が浮き上がっていた。本当に人が住んでいるのか怪しいほどの荒れ様だ。しかしよく見ると、家の硝子窓はまだ割れたままになっている。
どうしよう……。やっぱりやめようかな……。
汗がしたたり落ち、焼けるような日差しがじりじりと肌を焦がした。
あれから少年は、三日三晩、悩み続けた。登校する時も、授業中も、家に帰って食事をしている時も、お風呂に入っている時も、ずっと考え続けた。そして四日目の今日、少年はとうとう飛行機を取りに行こうと心に決めたのだ。ただその時は、マロンの家がこんなに荒んだところだとは思っていなかった。これじゃまるでお化け屋敷じゃないか……。
目の前の網戸は破れ、庭の雑草の奥に古いタイヤがジェンガのように積み上がって見えた。タイヤの隣には錆だらけの洗濯機が放置され、その手前には何かを燃やした跡がある。
少年は、マロンが犬を燃やして食べているところを想像して怖くなった。
どうする? 本当に行く? もし家にいなかったらどうする? いや家にいても飛行機を捨てられていたらどうする? だってあれからもう四日も経っている。
少年は不安でたまらない。無理はない。十歳の少年が見ず知らずの男の家にたった一人で訪ねようとしているのだ。しかも相手はヤクザの親分という噂もある。常識が通じるか分からない。少年からすれば、まさに猛獣のいる檻の中にこれから一人で入っていくようなものだった。そうは言っても、せっかくここまで来たんだという気持ちもないわけではない。ここで引き返したら、何のためにここまで来たのか分からない。
少年は大きく息を吸い込むと、ゆっくりと鼻から吐き出した。そして空っぽのリュックサックの肩ベルトをぎゅっと握ると、少年は意を決して玄関に回った。
日陰になった玄関には手前に開くタイプのアルミ製の扉があった。扉の右手には錆びた郵便受けがあり、その隣に古い呼び鈴がある。
少年はもう一度深呼吸をすると、勇気を振り絞って呼び鈴を押した。
ピン、ポーン――一瞬途切れたチャイムの音が家の中から聞こえてくる。
心臓がまたすぐに早鐘を打ち始め、大粒の汗が頬を伝い落ちた。じっと待っているほんの数秒が何十秒にも思える。
するとしばらくして、家の中からどかどかと乱暴そうな足音が聞こえてきた。それは今にも壁を突き破って飛び出してきそうで、少年はとっさに扉から離れた。すると間もなく、ゆっくりと扉が開いた。そしてその向こうからぬうと顔を出した男を見て、少年は言葉を失った。
これまでも男が大きいことは知っていた。でも実際に男を見たのはもっと遠くからで、こんなに間近で男を見たのは初めてだった。よれよれの白いランニングシャツに薄汚れた作業ズボン。首から提げたタオル。剃り上げられたつるつるの頭。そして何よりもその両腕にびっしりと彫られた和彫りの刺青。そのどれもが恐ろしい威圧感を放っている。
「あ、あの……」
少年がまごついていると、男はきょろきょろと周囲に目をやってから少年をぎろりと見下ろした。
圧倒的な強者の存在感だった。身にまとっているオーラが少年の知っている大人のそれとはまるで違う。どこか不吉で、どこか危険で、少年は今すぐに逃げ出してしまいたい衝動に駆られた。それに何というか、男は信じられないほどに臭い。
「なんだお前、一人で来たんか?」
ところが男の声を聞いた時、少年はふっと心が軽くなった気がした。男の言葉に強い訛りがあったからだ。どこの地方かは分からない。ただこの辺りの方言ではなかったし、男の話し方にはどこか優しさがにじんでいた。
「ひ、飛行機……、飛行機を返してください」
少年は勇気を振り絞って言った。
すると男は怒る様子もなく、むしろ驚いた様子で少年をじっと見下ろすと、一言、「待ってろ」と言い残して家の中に戻っていった。
少年は不思議だった。飛行機が家の窓を割っているのに怒らない大人なんているだろうか。周りにいる大人は些細なことでも注意してくる。廊下を走るな。食べ物で遊ぶな。忘れ物をするな。居眠りをするな。手を洗え。爪を切れ。帽子をかぶれ。静かに並べ。もし窓を割ったなんて知られたら、親を呼び出されて、親の前で一日中説教されても終わらない。それなのに、どうしてこの人は怒らないんだろう?
イカと煙草が混ざったような変な匂いが家の中から漂い出す。
少年は恐る恐る家の中を覗き込んだ――瞬間、少年は息を呑んだ。
玄関にある木製の靴箱。その一番上に手のひらサイズのトイドローンが置いてある。
あっ、ドローンだ! この前見たドローンだ!
少年の頭の中でドローンがぴゅうと空高く飛び上がった。
とそこへ、奥から男が飛行機を持ってやってくる。少年は慌てて扉の後ろに身を隠した。
男は飛行機を手に外へ出ると、それを少年に渡した。
「ほれ」
しかしそれを見た少年は、またあっと小さく声を漏らした。
飛行機の翼が片方折れて無くなっている。
「あっ、あの……」
「なんだ?」
「いや……、翼が……」
「翼?」
「あ、いや……」
「んなもんねえ!」
男は突然、怒鳴り声を上げ、少年はびくんと体をすくめた。そして少年は何も言えずに飛行機を持って走り出した。道端に止めておいた自転車に急いでまたがり、逃げるようにペダルを漕ぎ出す。そうして懸命にペダルを漕ぐ少年の顔は、どこか晴れやかに笑っていた。
◇
その夜――。
あどけない指に支えられ、片翼のない飛行機がゆっくりと宙を飛ぶ。
寝室の電気に照らされて、飛行機は白いシーツの上に歪な影を落としていた。
その影が今、ぴたりと止まる。
やっぱり見間違いじゃなかったんだ……。
ベッドに寝転んで手の中の飛行機を眺めていた少年は、誇らしげに笑みを浮かべた。
ぴかぴかに輝く青いボディ、黒光りするアーム、そして四方対称のプロペラ――目を瞑れば、その姿がありありと頭に浮かぶ。
あの人のドローンだったんだ……。
煌々と灯る天井の電気が目に入る。
それはやがて燦々と光り輝く太陽に変わり、どこからか蒸し暑い熱風が吹き抜けた。
目の前には見渡す限りに青い空が広がっている。
その空に、どこからともなくやってきたドローンは、頭上で太陽と重なり、光を遮って止まった。
まるで天から降りてきた神様を見ているようだった。
それは何を言うでもなく、ただじっと宙に浮いている。まるで、「さあ、私を操縦しなさい」、そう言っているようだった。
やってみなよ。
温かい夏風とともに懐かしい声が聞こえてくる。
振り返ると、カラフルな遊具の前に父親が立っていた。父親は煙草を吸いながら頷いている。そのけだるそうな微笑みを見ていると、なんだか本当にできるような気がして、少年は頭上のドローンを見上げた。
右へ行け、試しにそう念じてみる――と、ドローンが右へ移動した。
今度は、左へ行けと念じてみる。するとドローンは左に動き、念じるのをやめると止まった。
まるで自分の体の一部を動かしているみたいだった。ドローンは想像したとおりに右へ左へ動き、その場で回転もした。それはまさしく大空を自由自在に飛び回っているような感覚だった。ずっと夢見ていた光景だ。
できたよ!
嬉しくて振り向くと、そこには父ではなくマロンが立っていた。
その瞬間、空想が吹き飛ぶ。
天井の電気が目に入り、隣の部屋から母親の話し声が聞こえてきた。
少年は持っていた飛行機を慌ててベッドの下に隠した。そして薄いタオルケットを頭からかぶってベッドに横になると、両耳を手で塞いで眠りについた。
◇
飛行機が壊れて以来、少年は外には行かず、家でゲームをして過ごしていた。学校から帰ると、まずランドセルを床に置いて、冷蔵庫から麦茶を出して、それからダイニングテーブルの上にゲーム機をセットするのだ。台所は居間とつながっていてエアコンが効いているから涼しかった。その日もいつものように少年が台所でゲームをしていると、居間で仕事中の母親が言った。
「ねえ、外、行ってきなよ」
少年は耳を塞いでいたイヤフォンを外した。
「外、暑いし、嫌だよ」
すると母親は冗談っぽく笑った。
「暑くないよ、年中走り回ってる子どもが何言ってんのよ」
外は猛暑だ。こんな日に外で遊ぶ子どもはいない。それに飛行機は壊れている。外へ行けと言われても、どこへ行けばいいのか分からない。
「ええ……」
少年が渋っていると、母親は「畑中くんち行って勉強してきな」と言った。母親は少年が邪魔なのだ。そして少年も、母親がこう言う時はそれ以上言っても無駄なことを知っていた。
少年はしぶしぶ椅子から立ち上がった。そして水筒を用意したり、ゲーム機をリュックに入れたりと外へ行く準備を終えると、靴箱の上にあった自転車の鍵を手に取った。
自転車に乗って少年が向かった先は、いつもの河川敷だった。外へ行けと言われて少年が思いつく場所はここくらいしかない。少年はいつものように公園の前に自転車を止め、橋の下の日陰に座ってゲームをやり始めた。
ところが、ゲームをしていてもまったく楽しくない。コンクリートはからからに乾燥し、尻が焼けるように熱かった。おまけに風がないから、じっとしていると汗が噴き出してくる。たまに川風が吹くと体が冷やされて気持ち良かったが、それでも何が楽しくて外でゲームをしているのか、自分でも分からなかった。首はべたべたするし、足は蚊に刺されて痒い。
「あーあ、つまんないな……」
足をぱちんとやって川の方に目をやると、遠くの芝生広場で幼い子どもが父親と追いかけっこをして遊んでいた。二、三歳くらいだろうか。まだ歩き方も覚束ない男の子がきゃっきゃと楽しそうに逃げ回っている。
それを見て、少年は奥歯を噛んだ。
少年が父親と遊んだ記憶はない。あるのは、飛行機を買ってもらったことと、それで何度かここで遊んだことくらいだった。しかも父親は、またここに来る約束を守ることなく、少年の前から姿を消している。
少年がぼんやりと遠くの親子を眺めていると、今度は土手の上から犬同士の鳴き声が聞こえてきた。
おそらく散歩中の犬同士がばったり出会って吠えているのだろうが、それさえも少年には楽しそうな会話に聴こえた。まるで自分の周りでばかり楽しい時間が流れているような、自分だけ一人取り残されたような、そんな寂しさがじわじわと胸に込み上げてくる。
みんないいなあ……。
少年は空を見上げた。
頭上には、見渡す限りに青い空が広がっていた。
僕はみんなに自慢したかっただけなんだ。
それなのに、お母さんは飛行機をものすごく嫌っている。どうして?
その時、ふと風が止んだ。湿った空気がもわっと少年の体を包み込む。と次の瞬間、青空に向かって小さなドローンがすうとまっすぐに飛び上がった。
◇
それは少年にとってまさに号砲だった。
心の撃鉄が落とされ、まるで胸の内側に燻っていた嫌な思いが代わりに飛び出していったように感じたのだ。
それは止めどなく胸が高鳴っていく感覚。それまでの鬱屈した日々からは想像もつかない、まったく新しい何かが始まる感覚。颯爽と空に飛び上がるドローンを目にした瞬間から、この先の人生における景色が一変した、そういう感覚――。
少年は自然と立ち上がり、目の前の茂みに向かっていた。
顔の高さまである雑草を掻き分けて無我夢中で進んでいく。橋桁の近くを飛行するドローンを見失わないよう、少年は上を見上げながら茂みの奥へと入っていった。
茂みを抜けると、橋の下にぽっかりと開いた空間があった。橋脚と橋脚の間にある日陰の空間だ。少年はこんなところに空間があることを知らなかった。足元を見れば中小の川石で埋め尽くされ、所々にゴミが落ちている。コンクリートの壁には芸術的な落書きが幾つも描かれて、奥の薄暗闇の中にブルーシートも見えた。人がいた痕跡はそこら中にあるのに人の気配はない。なんとなく時間が止まったような、見捨てられたというか、取り残されたというか、なんだか少し寂しい感じのする場所だった。
ところが誰もいないと思っていたら、薄暗闇の中に動くものがある。
川表にある橋脚に描かれた白と水色の落書き、その文字だか絵だか分からない落書きの前に立って、暗がりから空を見上げていたのはマロンだった。その手には白いプロポが握られて、その口元からはくわえ煙草の煙がゆらゆらと橋桁に向かって上っている。
「あっ!」
少年が声を漏らすと、マロンはそれに気付いて少年の方を向いた。
「なんだ、お前か」
空に浮かんでいたドローンがマロンと少年の間にすうと降り立つ。まるで自分に挨拶をするためにわざわざ空から降りてきてくれたようだと少年は思った。
マロンがドローンに近づいていく。少年も走った。
「あの、それ……」
少年がためらいがちに口を開く。
「これか?」
マロンは持っていたプロポに目をやると、少年の心を見透かすように少年を見下ろした。
「やりてえんか?」
「うん」
「しょうがねえな」
マロンはそう言うと、プロポを少年に差し出した。
少年は差し出されたプロポに手を伸ばしかけて、途中でふと動きを止めた。ほんの一瞬だけ、マロンの顔を窺う。
本当にいいの?
確認するように見上げると、マロンは頷き、少年はようやく両手でそっと、しかしぎゅっと大事そうにそれを受け取った。
プロポの重みが手のひらにずっしりと乗って、胸の奥がきゅっと締め付けられる。手の中のプロポはまるで火がついたみたいにじんわりと温かくて、右手の親指が自然とスティックの先をなぞっていた。
「やり方わかっか?」
少年が首を振る。
「こっちのスティックが上下、こっちが前後左右。それを上にあげてみろ」
少年は息を呑んでそっとスティックに指を添えた。
カチ。カチ。ほんの少しだけ指先が震える。でもそれは怖いからじゃない。嬉しい。とにかく嬉しくて心のどこかがふわふわと浮いていた。
スティックを上にする、と地面にあったドローンが甲高いモーターを出して宙に浮き上がる。
「わぁ……」
興奮と感動が体の中を風のように駆け抜けていった。
初めてそれを見たあの日から、ずっと操縦したいと思っていた。それを、今、自分が操縦している。決して夢なんかじゃない。本当に本物のドローンだ。
「もっと上げたきゃ、もっと上がっぞ」
少年がスティックをもっと上にする。するとドローンは、先ほどと同じ橋の高さまで勢いよく上昇した。
上空で黒い機体が風に揺れている。それはまるで勇ましいヘラクレスオオカブトのように、ちらちらと陽光を反射し、大気を震わしていた。
なんて存在感、なんて格好いいんだ――。
スティックを右に倒す。と、ドローンは右へ移動する。
スティックを左に倒す。と、ドローンは左へ移動した。奥へ倒せば奥へ、手前に倒せば自分に向かって飛んでくる。
「わぁ、すごい……」
それ以外の言葉が出てこない。少年の目は空中のドローンを捉え、その指は思いのままにドローンを操っていた。
「うまいぞ、その調子だ」
ドローンを見上げる少年の傍で、マロンは煙草を吸いながら空を見上げていた。その手には、どこから持ってきたのか、缶ビールが握られている。マロンはビールと煙草を交互にやりながら、ドローンを見上げて笑っていた。薄らと開いたその口元からは欠けた犬歯が覗いている。
「僕ね、飛行機も操縦できるんだよ」
「そうか」
「だからこれも簡単だよ」
「それは簡単なやつだ。目を離すな」
「大丈夫! やりかた分かってきた!」
少年はドローンを移動させながら茂みの方へと進んでいった。二人のいる空き地は橋脚の付近にあるだけで、その先は茂みで囲まれている。少年がやって来た方は土手、反対側は川へと続いていたが、少年はドローンに夢中で自分がどこに向かっているのか分かっていなかった。
「見て見て! ほら、あんなに高く飛べるよ!」
少年が得意気にマロンに振り返る。するとマロンは煙草を挟んだ指先で茂みの奥を指さした。
「そっちは用水路があっから危ねえぞ!」
マロンのどすの利いた低い声が飛んでくる。
「こっち戻ってこい!」
少年は茂みの手前で足を止めると、茂みの奥を覗き込んだ。
マロンが言う通り、そこには幅二メートルほどの水路が流れていた。フェンスも何もない。茂みの先は坂になっていて、マロンに言われなければ、足を滑らせて落ちていたかもしれなかった。
「もう終わりだ」
背後からマロンの声が近づいてきて、振り返ると、煙草の煙が顔にかかった。
マロンの刺青だらけの太い腕がぬうと伸びて、少年の手からプロポを奪い取る。
「えぇ、もっとやらせてよ」
「ダメだ、今日は終わり」
「えぇ……」
「いいか、これは俺とお前だけの秘密だ。秘密。わかっか?」
「うん」
「誰にも言うなよ」
そう言うと、マロンは少年をじっと見下ろした。
つるつるに光る頭、げじげじの眉とその間にある深い皺。膨らんだ腹に刺青の入った太い腕は、少し前なら緊張と恐怖を瞬時に感じさせたが、この時の少年はそうならなかった。
「うん、わかった。じゃあ、明日来てもいい?」
少年が明るく問いかけると、マロンは困ったように頭をかいた。
「いいよ」
呆れたような笑い顔の奥には、薄らと優しさが感じられた。まるでいなくなってしまった父親と話をしているような、自分にとても近い人と遊んでいるような、そんな感覚が込み上げたのだ。実際、マロンは少年の父親によく似ていた。外見ではない。煙草の煙を空に向かって吐き出すところや、昼間からビールを飲んでいるところ、そして何より、そのなんでも好きなようにすればいいといった自由奔放な雰囲気がそっくりだった。少年にしてみれば、ドローンを飛ばしたたった数分の短い時間でさえ、父親と一緒に遊んでいるような感覚だったのだ。みんなが言うほど怖い人じゃない、少年がそう思ったのはこの時だった。
それから二人は毎日のように遊ぶようになった。学校が終わると、少年がマロンの家の戸を叩き、マロンと一緒に例の秘密の場所へ歩いていく。そしてそこでマロンは煙草を吸い、少年はドローンを飛ばす。ドローンという共通の趣味を通して、二人の仲は急速に深まっていった。少年はマロンを父親のように慕い、マロンは少年を甥っ子のように可愛がっていたのだ。